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公共施設が担う避難所機能:種類ごとの役割と自治会による周知

Tags: 避難所, 公共施設, 自治会, 防災, 避難所の種類

はじめに

災害が発生した際、安全な場所へ避難することは命を守るために最も重要な行動の一つです。地域における避難先として、多くの公共施設が指定されています。しかし、「避難所」と一口に言っても、その機能や役割にはいくつかの種類があることをご存知でしょうか。

自治会役員の皆様が、地域の住民の皆様に適切な避難情報を提供するためには、これらの避難所の種類とそれぞれの役割を正しく理解しておくことが不可欠です。本記事では、公共施設が担う主な避難所機能である「指定緊急避難場所」と「指定避難所」の違い、それぞれの役割、そして自治会が住民へ情報を周知する際のポイントについて詳しく解説します。

指定緊急避難場所と指定避難所の違い

災害対策基本法に基づき、市町村は住民が災害時に避難するための場所を指定しています。主に以下の二種類があります。

指定緊急避難場所

指定避難所

| 区分 | 役割 | 目的 | 主な指定場所例 | 滞在期間(想定) | | :----------------- | :----------------------------------------- | :------------------------------------- | :----------------------------------------------- | :--------------- | | 指定緊急避難場所 | 差し迫った危険から一時的に身の安全を確保 | 命を守る緊急避難 | 高台、公園、広場、頑丈な建物の上層階など | 一時的 | | 指定避難所 | 被災した方が一定期間生活する場所 | 避難生活の継続、生活支援 | 学校、公民館、体育館、集会所など(多くの公共施設) | 一定期間 |

この二つの場所は、それぞれ役割が異なります。災害の種類や状況に応じて、まず指定緊急避難場所で身の安全を確保し、その後に指定避難所へ移動するという流れが一般的です。

公共施設が担う役割と確認方法

地域の多くの学校や公民館、体育館などの公共施設は、指定避難所として重要な役割を担っています。これらの施設は、災害発生時に多くの被災者を受け入れ、生活の場を提供するための備えを進めています。

お住まいの地域でどの公共施設が、指定緊急避難場所や指定避難所に指定されているかは、市町村が作成するハザードマップや防災マップ、または自治体のウェブサイトで確認することができます。地図上で避難場所の種類や所在地が示されており、自宅や地域の危険区域と合わせて把握しておくことが大切です。

自治会が住民に周知する際のポイント

避難所の種類と役割を住民の皆様に正しく理解していただくために、自治会として以下の点を踏まえた周知活動が有効です。

  1. ハザードマップと合わせて伝える: 地域の危険区域(洪水浸水想定区域、土砂災害警戒区域など)と、それに応じた指定緊急避難場所・指定避難所の位置をセットで周知することで、住民は自身の居住地の危険と、どこへ、どのように避難すべきかを具体的にイメージしやすくなります。
  2. 避難場所の「種類」を明確に: 単に「避難所」と伝えるだけでなく、「ここは津波から一時的に避難するための指定緊急避難場所です」「ここは自宅に帰れなくなった方が生活する指定避難所です」のように、それぞれの名称と役割を明確に区別して伝えましょう。
  3. 場所の確認を促す: 自治体から配布されるハザードマップや防災マップを活用し、各自の自宅からの避難ルートと合わせて、最寄りの指定緊急避難場所および指定避難所の位置を事前に確認しておくよう呼びかけます。
  4. 情報弱者への配慮: 高齢者や障がいのある方など、情報が届きにくい方々へは、個別の声かけや、回覧板、地域の集会など、様々な方法で丁寧に情報を伝達する工夫が必要です。避難所までの移動手段についても、地域での支援体制を検討することも重要です。
  5. 平時からの関心を高める: 地域の公共施設が普段どのように利用されているかを知る機会(イベント参加など)を通じて、施設そのものへの親しみを持ってもらうことも、いざという時の避難行動につながります。また、地域の防災訓練に参加し、避難所の開設・運営訓練を体験することは、避難所の役割理解を深める上で非常に有効です。

まとめ

公共施設は、災害時において地域の安全と生活を支える避難所として、極めて重要な機能を担っています。指定緊急避難場所と指定避難所という異なる役割を持つこれらの施設について、自治会がその違いと役割を正しく理解し、地域住民の皆様に分かりやすく伝えることは、適切な避難行動を促し、命を守ることに直結します。

ハザードマップと連携した周知、避難所種類の明確な説明、そして平時からの施設への関心を高める活動を通じて、地域の防災力を一層高めていきましょう。自治会は、地域の「もしも」に備える上で、住民と行政をつなぐ重要な役割を果たしています。