自治会が住民に伝えたい:避難所の電力・通信環境と避難時の備え
災害時、避難所で生活を支える電力と通信の重要性
大規模な災害が発生し、自宅での生活が困難になった場合、地域の公共施設などが避難所として開設されます。避難所は、安全な場所を提供するだけでなく、被災された方々が共同生活を送る上での基盤となります。この基盤を支える上で不可欠なのが、電力と通信の確保です。
停電や通信網の途絶は、避難生活に多大な影響を及ぼします。照明や暖房、医療機器の利用、そして安否確認や情報収集など、基本的な生活機能の維持が困難になるためです。自治会として地域の住民に避難所情報を周知する際、単に場所を伝えるだけでなく、こうした避難所における電力や通信の状況、そして住民自身が準備すべきことについてもお伝えすることが、住民の不安軽減と円滑な避難生活のために重要となります。
避難所における電力確保の現状と課題
多くの避難所となる公共施設では、大規模停電に備え、非常用発電機や蓄電池などの設備を備えている場合があります。しかし、これらの設備能力には限りがあり、全ての避難者の電力需要を賄えるわけではありません。
避難所の電力設備について住民に伝えるべきこと
- 設備の有無と種類: 地域の指定避難所に非常用発電機や蓄電池があるか、その設備の概要を行政に確認し、周知リストに含めることを検討します。
- 供給能力の限界: 非常用電源は、主に必要最低限の照明や通信設備、一部の医療機器などの電力供給を目的としており、個人のスマートフォン充電や暖房器具の使用などには制限がある場合が多い点を伝えます。
- 利用上の注意点: 発電機稼働時には騒音や排気ガスが発生すること、燃料の枯渇リスクがあることなども、運営上の課題として認識しておくと良いでしょう。
住民自身が準備すべき電力対策
避難所での電力供給には限りがあるため、住民一人ひとりが電力確保の備えをしておくことが非常に有効です。
- モバイルバッテリーの準備: スマートフォンなどの充電用に、容量の大きなモバイルバッテリーを複数準備しておくことを推奨します。
- 手回し充電器やソーラー充電器: 電力供給が長時間途絶した場合に備え、多様な充電手段を用意しておきます。
- 予備電池: 懐中電灯や携帯ラジオなど、電池で動く機器の予備電池を十分に準備しておきます。
- 家電製品の利用制限: 避難所では、基本的に個人的な電気製品(電気毛布、ポットなど)の使用は制限されることを伝えておきます。
避難所における通信環境と情報伝達
災害時には携帯電話の基地局が被災したり、アクセスが集中して通信障害(輻輳)が発生したりする可能性が高まります。避難所では、こうした状況下でも情報伝達や安否確認を行うための通信手段が準備されることがあります。
避難所の通信手段について住民に伝えるべきこと
- 特設公衆電話: 避難所などに災害用として設置される電話です。無料で利用できる場合が多いです。
- 災害時用Wi-Fi(00000Japanなど): 一部の通信事業者により、非常時のみに開放される公衆無線LANサービスです。SSID「00000Japan」(ファイブナイン・ゼロ・ジャパン)などがこれにあたります。
- 衛星電話: 行政や一部の避難所に配備されていることがあり、地上の通信網が寸断されても通信が可能です。利用には制限があります。
- 簡易な通信手段: スマートフォンの災害伝言板サービス、災害用伝言ダイヤル(171)の活用方法を周知します。インターネットに接続できない場合でも、音声による伝言は利用できる場合があります。
住民自身が準備すべき通信対策
- 複数の通信手段の検討: 携帯電話だけでなく、家族間の安否確認方法として、待ち合わせ場所を決めておく、特定のメッセージアプリを利用するなどを事前に決めておきます。
- 充電済みの状態を保つ: 日頃からスマートフォンの充電を十分にしておく習慣をつけます。
- オフラインで利用できる情報: ハザードマップや避難所の地図などを、スマートフォンのオフライン機能や紙媒体で用意しておきます。
自治会による避難所での情報伝達
避難所が開設された後、自治会として住民への情報伝達を支援することも重要な役割です。
- 広報掲示: 行政からの情報、避難所のルール、物資配給の情報などを手書きの貼り紙や掲示板で分かりやすく伝えます。
- 声による伝達: 拡声器や肉声による呼びかけで、重要な情報を周知します。
- 地域メディアの活用: 地域のコミュニティFMや自治会のSNSなどが機能している場合は、それらを活用します。
平時からの備えと自治会の役割
避難所の電力・通信環境は、自治体が把握し、住民に適切に周知することで、災害時の混乱を軽減できます。
- 地域の避難所設備の確認: 地域の指定避難所にどのような電力・通信設備があるか、日頃から行政や施設管理者と連携して把握しておきます。
- 周知資料への追記: 避難所に関する住民への周知資料(避難所マップ、持ち物リストなど)に、電力・通信に関する項目を追加することを検討します。例えば、「充電器・モバイルバッテリー」「予備電池」などを持ち物リストに含めます。
- 避難訓練での確認: 避難所運営訓練や住民向け防災訓練の中で、電力・通信が途絶した場合の対応をシミュレーションし、課題を洗い出します。
まとめ
災害時における避難所の電力と通信の確保は、避難生活の質に直結する重要な課題です。非常用設備には限界があることを理解し、行政や施設管理者による備えに加え、住民一人ひとりの事前の準備が不可欠となります。
自治会が地域の避難所の電力・通信環境について正確な情報を把握し、住民に分かりやすく伝えることは、住民の防災意識を高め、いざという時の適切な行動を促すことに繋がります。平時からのこうした取り組みが、「もしものため」の安心を築く基盤となります。